はじめに
この記事は、以下のような方に向けて「会社で無料のChatGPTが禁止されているときに、仕事で安全に生成AIを使う方法」を分かりやすくまとめたものです。
- 仕事でChatGPTやClaudeを使いたいが、提供元のOpenAI社やAnthropic社が取引実績のないアメリカのベンチャー企業なので、社内規定やセキュリティの観点から会社で利用が禁止されている。
- 無料で使える個人用のChatGPTやGeminiはデフォルトで「プロンプトがモデル改善・学習に使用される」設定ため、設定漏れを懸念して職場での利用を禁止されている。
- 個人用のChatGPTがシャドーAI化しているが、本当は会社に安全な生成AIを準備してほしい。
- 仕事で使ってみたいが、直近は大量の処理は行わない使わないので、使った分だけ課金したい。
- 会社が企業向けのGeminiやChatGPTを会社が買ってくれないので別の手を考えている。
無料の生成AIを仕事で使うリスク
OpenAIのChatGPT、AnthropicのClaude、GoogleのGeminiには無料で使えるバージョンが存在します。これらの無料の生成AIはたいへん便利なのですが、1つ大きなリスクがあります。
そのリスクとは、デフォルト設定でプロンプト/チャット内容がモデルの改良や訓練に使われる(またはその可能性がある)ことです。
設定を変更せず、プロンプト/チャット内容がモデルの改良や訓練に使われると、生成AIの出力に仕事で入力したチャット内容が使われてしまうリスクがあります。
仮に学習に使われたチャットに「営業秘密」「顧客情報」「内部資料」などが含まれる場合、これらの情報が外部に流出する可能性があり大変危険です。
「学習オフ」に設定すれば安全か → 結論:おすすめできない
無料版の生成AIはデフォルト設定でプロンプト/チャット内容がモデルの改良や訓練に使われるようになっています。そのため、設定を変更することで、プロンプト/チャット内容をモデルの改良や訓練のための使用を停止させることができます。
設定を入れることで、一見上記のリスクは回避できるように思われますが、組織での活用を想定する場合、設定が漏れる可能性があるためおすすめできません。
また、ポリシーなどがサイレント更新されるリスクや、アップデートや設定項目の変更をきっかけに、ユーザーが過去に入れた設定が初期値に戻ったり、効かなくなるリスクもあります。
そのため、企業のITガバナンス上「無料版+個別設定」で安全性を担保することは基本的に不可能です。
仕事で生成AIを使う方法
企業で生成AIを安全に活用する方法は大きく分けて次の3つです。
- 企業向けの生成AIを契約する
- 生成AIのAPIを利用する
- オープンソースの生成AI(社内環境)を使う
それぞれの特徴を順に解説します。
自社で生成AIを開発するという方法もありますが、今回は割愛します。
①企業版の生成AIの活用
1つ目の方法は、OpenAIなどのAIベンダーが提供する企業用の生成AIを利用することです。
AIベンダーは以下のラインナップで生成AIを提供していることが多いです。
- 無料の生成AI
- 個人用の有料の生成AI
- 企業用の有料の生成AI
- API経由で利用可能な生成AI
OpenAIのChatGPT、AnthropicのClaude、GoogleのGeminiには、企業用の有料の生成AIが準備されています。本記事の執筆時点(2025年11月)においては、本記事の執筆時点(2025年11月)では、OpenAI / Anthropic / Google など主要ベンダーの企業向け有料プランでは、「ビジネスデータをモデルの学習に利用しない」旨のポリシーが明示されています。
ただし、サービス提供・不正検知・ログ監査などの用途まで含めて一切使わないかどうかについては、確認する必要があります。また、ポリシーが変更になるリスクがあることは認識しておく必要があります。
| 企業名 | プロダクト名 | 企業名のライセンス |
| OpenAI | ChatGPT | Business/Enterprise |
| Anthropic | Claude | Team/Enterprise |
| Gemini | Business/Enterprise/ Workspace |
表の内容は2025年11月時点のものとなります。最新の情報については、各AIベンダーのホームページをご確認ください。
企業版の生成AIを活用する方法は、今回紹介する方法のうち、ITエンジニアでない人にとっては一番手軽な方法になります。
②生成AIのAPIの活用
2つ目の方法は生成AIのAPIを利用するという方法です。
APIとは、「アプリ同士が会話するための窓口」のようなものです。RPAやシステム導入に携わったことがある方は名前は聞いたことがあるかもしれません。
API経由で生成AIを活用する利点としては、多くのエンタープライズ向けAPIでは生成AIに入力した/出力されたデータは、生成AIの学習に利用しない旨のポリシーが設定されている点にあります。
また、ChatGPTのAPIを使いたいがOpenAIの管理するサーバに情報を送信するのは不安というケースでは、ChatGPTのAPIをマイクロソフトが管理するサーバに構築されているChatGPTのAPIを使用することができるサービス(Azure Open AI Service)もあります。Azure Open AI Serviceは東京リージョンなど稼働するリージョンを指定できるため、海外にデータを送信したくないようなケースでは東京リージョンのAzure Open AI Serviceを使う方法も選択肢の一つとなります。
加えて、RPAなどを使った自動化に生成AIを組み込みたい場合には生成AIのAPIを活用する方法がおすすめです。ChatGPTなどのブラウザから使う生成AIは画面の構成が良く変わるので、都度RPA側の調整が必要になりますが、APIだと基本はそのような調整は不要となります。
また、APIを活用したチャットボットを使う場合、自社用のカスタマイズが容易にできる可能性があります。具体的には、後述の「生成AIのAPIを利用したチャットボット」で紹介します。
③オープンソースの生成AIの活用
3つ目の方法は、オープンウェイトやオープンソースの生成AIの活用する方法です。
この方法は、生成AIを社内PCや自社サーバーに入れて自由に使える仕組みを作ると考えてください。
オープンウェイトの生成AIとしては、Meta社の Llama が有名です。また OpenAI も、Apache 2.0 ライセンスで利用できるオープンウェイトモデル gpt-oss を公開しています。
オープンソースの生成AIを活用する利点としては、生成AIが動作する環境として、社内のPCや自社のサーバを選択した場合、プロンプト/チャットを他社のサーバに送信しなくてよいため、ほかの方法と比較して情報漏洩のリスクを低減できる点になります。
ただし、ストレスなく生成AIを動かすためには、かなり高スペックの環境を準備する必要があるため、導入の方法によっては他の方法と比較して高コストになる可能性があります。
3つの選択肢の比較
ここまで紹介した3つの方法をシンプルに比較すると、以下の通りです。
| 方法 | 難易度 | 安全性 | コスト | カスタマイズ性 |
| 企業向け生成AI | 低 | 高 | 低~中 | 低 |
| API利用 | 中 | 高 | 低~中 | 高 |
| オープンソース | 高 | 最高 | 高 | 高 |
非エンジニアの場合、現実的な選択肢は「企業向けAI」か「API」のいずれかになります。
生成AIのAPIを利用したチャットボット
ブラウザで使用するChatGPTと同じ使用感で、生成AIのAPIを使にはブラウザ経由で使用できるチャットボットを作る方法があります。
※上記のようなチャットボットの提供サービスを展開している会社もあります。
イメージを持ってもらうために、簡単にチャットボットを作ってみました。

こんな感じでChatGPTと同じようにAPI経由で生成AIを使うことができます。
生成AIのAPIを使うチャットボットを開発する場合の利点としては、以下のような点が挙げられます。
- 生成AIのAPIは従量課金のため使った分しか生成AIの費用が発生しない。
- 自社用のカスタマイズが容易になる。
自社用のカスタマイズが容易になる点について、実際にチャットボットにカスタマイズをしてみたいと思います。改修内容はチャットにメールアドレスが入力された場合に検知してメールアドレスを削除してチャットするようアラートを出す機能追加とします。
改修前
メールの返信を作成するタスクを例に紹介します。
プロンプトには「hogehoge@exsample.com」というメールアドレスが含まれていますが、チェック処理がないため、チャットの内容が生成AIに送信され、メールの返信文面が作成されています。


改修後
改修後はチャット内容にメールアドレスが含まれると生成AIにチャット内容を送信せずに「プロンプトにメールアドレスが含まれています。」と表示するようなりました。

API経由の利用では、チャット/プロンプト内容は学習に使われないというポリシーがある一方で、外部のサーバに送信したくない情報をチェックしたいという要望が発生することがあります。
そのようなケースでは、生成AIのAPIを使ったチャットボットを開発することで要望をかなえることができます。
まとめ
会社でOpenAIのChatGPTが禁止されているが、生成AIを仕事で使いたいときの方法について紹介しました。
現実的には、「企業用の生成AIの活用」か「生成AIのAPIの活用」のいずれかの選択肢が有力です。
「企業用の生成AIの活用」の方が、非ITエンジニアだと導入コストが低いと想定される一方で、「生成AIのAPIの活用」すると、カスタマイズが自由にできます。また、自動化する場合には「生成AIのAPIの活用」の選択肢をとることになります。
ChatGPTは使いたいが、OpenAIの管理サーバーに情報を送信することに抵抗があるケースではAzure Open AI Serviceの利用が選択肢の1つとなります。
あなたの会社のIT環境や業務ニーズに合った方法を選ぶことで、安全かつ効率的に生成AIを活用できます。今後の記事では、APIを活用した業務自動化などを紹介していきます。

コメント